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『私、――なんにも、――』そうして、しとやかにお辞儀して、それだけでも、かなりの思い伝え得るのだ。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『創生記』

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〈全文〉
言葉で表現できぬ愛情は、まことに深き愛でない。
むずかしきこと、どこにも無い。
むずかしいものは愛でない。
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盲目、戦闘、狂乱の中にこそより多くの真珠が見つかる。

『私、――なんにも、――』そうして、しとやかにお辞儀して、それだけでも、かなりの思い伝え得るのだ。
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いまの世の人、やさしき一語に飢えて居る。
ことにも異性のやさしき一語に。
__ Link __

明朗完璧の虚言に、いちど素直にだまされて了(しま)いたいものさね。
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このひそやかの祈願こそ、そのまま大悲大慈の帝王の祈りだ。


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