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[ 名言 ]
やはり己も愛さなければいけない。
己を嫌って、或(ある)いは己を虐(しいた)げて人を愛するのでは、自殺よりほかはない。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『わが半生を語る』

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〈全文〉
キリスト主義といえば、私はいまそれこそ文字通りのあばら家に住んでいます。
私だってそれは人並の家に住みたいとは思っています。
子供も可哀そうだと思うこともあります。
けれども私にはどうしてもいい家に住めないのです。
それはプロレタリア意識とか、プロレタリアイデオロギーとか、そんなものから教えられたものでなく、キリストの汝等(なんじら)己を愛する如く隣人を愛せよという言葉をへんに頑固に思いこんでしまっているらしい。

しかし己を愛する如く隣人を愛するということは、とてもやり切れるものではないと、この頃つくづく考えてきました。
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人間はみな同じものだ。
そういう思想はただ人を自殺にかり立てるだけのものではないでしょうか。
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キリストの己を愛するが如く汝の隣人を愛せよという言葉を、私はきっと違った解釈をしているのではなかろうか。
あれはもっと別の意味があるのではなかろうか。
そう考えた時、己を愛するが如くという言葉が思い出される。

やはり己も愛さなければいけない。
己を嫌って、或(ある)いは己を虐(しいた)げて人を愛するのでは、自殺よりほかはないのが当然だということを、かすかに気がついてきましたが、然しかしそれはただ理窟(りくつ)です。
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