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人間は不幸のどん底につき落され、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷(いちる)の希望の糸を手さぐりで捜(さが)し当てているものだ。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『パンドラの匣』

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〈全文〉
それはもう大昔からきまっているのだ。
人間には絶望という事はあり得ない。
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人間は、しばしば希望にあざむかれるが、しかし、また「絶望」という観念にも同様にあざむかれる事がある。
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正直に言う事にしよう。
人間は不幸のどん底につき落され、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷(いちる)の希望の糸を手さぐりで捜(さが)し当てているものだ。
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それはもうパンドラの匣以来、オリムポスの神々に依(よ)っても規定せられている事実だ。


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