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[ 名言 ]
地下足袋をはいてお庭を歩いてみたら、鳥やけものが、はだしで地べたを歩いている気軽さが、自分にもよくわかったような気がして、とても、胸がうずくほど、うれしかった。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『斜陽』
主人公の言葉

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〈原文全文〉
私は戦争の時に徴用されて、ヨイトマケまでさせられた。
いま畑にはいて出ている地下足袋も、その時、軍のほうから配給になったものである。
地下足袋というものを、その時、それこそ生れてはじめてはいてみたのであるが、びっくりするほど、はき心地がよく、それをはいてお庭を歩いてみたら、鳥やけものが、はだしで地べたを歩いている気軽さが、自分にもよくわかったような気がして、とても、胸がうずくほど、うれしかった。
戦争中の、たのしい記憶は、たったそれ一つきり。
思えば、戦争なんて、つまらないものだった。


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