〈全文〉
私は、人間をきらいです。
いいえ、こわいのです。
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人と顔を合せて、お変りありませんか、寒くなりました、などと言いたくもない挨拶を、いい加減に言っていると、なんだか、自分ほどの嘘つきが世界中にいないような苦しい気持になって、死にたくなります。
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そうしてまた、相手の人も、むやみに私を警戒して、当たらずさわらずのお世辞やら、もったいぶった嘘の感想などを述べて、私はそれを聞いて、相手の人のけちな用心深さが悲しく、いよいよ世の中がいやでいやでたまらなくなります。
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世の中の人というものは、お互い、こわばった挨拶をして、用心して、そうしてお互いに疲れて、一生を送るものなのでしょうか。
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私は、人に逢うのが、いやなのです。
だから私は、よほどの事でもない限り、私のほうからお友達の所へ遊びに行く事などは致しませんでした。